織りネームという、ブランドの証明
こんにちは。
当店の織りネームが届きました。
ほんの数センチの小さな布片。
けれどその中には、ブランドの歴史、誇り、思想が凝縮されています。

タグのはじまり ― 産地と誇りの証
衣服にブランドネームが縫い付けられるようになったのは、
19世紀後半から20世紀初頭にかけて。
当時は「ブランド」という概念よりも、
産地や品質を証明する印として機能していました。
テーラーや生地商は、
自らの仕事への責任として名を記したのです。
つまりネームタグとは、
“売るための装飾”ではなく、
覚悟の証明でした。
織りネームに宿る物語
私がセレクトショップで働いていた頃、
よくタグを眺めていました。
ブランドの由来、創業年、国名。
小さな文字の中に、圧倒的な背景がある。
例えば、英国の名門シャツ地ブランド
THOMAS MASON(トーマス・メイソン)。

現在はイタリアのアルビニ社の傘下ですが、
ネームには英国の獅子と創業年が入り、
ロイヤルワラントを想起させる意匠が施されています。
そこには、
英国の産業革命とともに歩んだ歴史と誇りが宿っている。
タグを見るだけで、
時代や文化が想像できるのです。
なぜ、ネームを作るのか
オーダーメイドを行う店として、
ネームは単なるロゴではありません。
それは、
-
どこで仕立てられたのか
-
どんな思想で作られたのか
-
誰が責任を持つのか
を静かに語る存在です。
既製品市場で長く働いてきた私にとって、
ブランドネームは“飛び道具”のようなものでもありました。
名前を掲げるということは、
品質に責任を持つということ。
だからこそ、妥協はできません。

デザインよりも、思想を
当店の織りネームは、
ライトグレーにブラックのロゴ。
あくまで控えめに、
主張しすぎない佇まい。
オーダーアイテムの主役は、
あくまでお客様であり、仕立てそのもの。
ネームが邪魔をしてはいけない。
それが私たちの考えです。
触れたときの質感まで
そして、もう一つ大切にしたこと。
それは「肌触り」。
オーダーシャツにも縫い付けるため、
直接肌に触れる部分になります。
採用したのは、
朱子(サテン)の高密度織。
上品な光沢と、
柔らかく滑らかなタッチ。
見えない部分にも、
丁寧な選択を。
それが、オーダーを提案する店の責任だと思っています。
未来へ残る、小さな証
織りネームは、
決して目立つ存在ではありません。
けれど、何年も経ったとき、
クローゼットの中でそのタグを見た瞬間に、
「ここで作った一着だ」
と思い出していただける存在でありたい。
それはブランドの主張ではなく、
信頼の記憶装置のようなもの。
皆様のオーダーアイテムに
このネームを縫い付けられることを、
心より楽しみにしております。